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【9巻ネタバレ】『住みにごり』全話あらすじ&感想|壊れゆく末吉とフミヤの対立、揺れる母への想い、そして父の影…動き始める西田家の運命

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『住みにごり』9巻の表紙。幼い末吉と母がキッチンに立つ姿が描かれ、家族の記憶と温度が込められた象徴的な一枚。
住みにごり(9)

住みにごり第9巻は、読んでいて息が詰まるような重さと、
それでもどこか優しい光が混ざり合っている巻です。

柊凪(ひなぎ)が兄に抱いてきた「誰にも言えない想い」。
夏海が、ほんの少しだけ外の世界へ歩き出す瞬間。
そして、ずっと家族を支えてきた末吉が、とうとう限界を超えてしまう瞬間。

どの場面も派手な事件ではないのに、
読み終えたあと、胸の奥に長く残る“痛みとぬくもり”がありました。

ここでは、78話〜87話までの流れを振り返りながら、じっくり深掘りしていきます。

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新沼兄妹と出会い、
人との交流を深めていくフミヤ。
誰かを頼ることもできず、
孤立を深めていく末吉。

困窮する生活。母の認知症の兆候。
苦しみ、もがいた先で、
末吉は少しずつ、壊れていく──

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第78話「朝食」〜79話「鼻歌」

前半は、新沼兄とフミヤの距離が、ゆっくりと近づいていくパートです。

新沼家での朝のシーン。
フミヤは、真夜中からずっと家の前に立ち続けていました。
ようやく家の中に招き入れられ、新沼兄弟と一緒に朝食を囲む。

朝食後、新沼兄はフミヤを自分の“過去の巣”である部屋に案内します。

元ひきこもり時代の部屋。
散らかったもの、乱雑な空間。
そして壁に残された「ありがとう」「うれしい」「おはよう」といった言葉の群れ。

かつて彼は、
自分がどこにもつながっていないと感じながら、
それでも言葉の力にしがみつこうとしていました。
忘れていた言葉を壁に書き、
毎朝それを声に出して読んでいた。

「役に立ったかどうかはわからないけれど、必死だった」
その告白に、読んでいる側も胸が詰まります。

フミヤはその部屋を、遠巻きに、でも興味深そうに見て、
彼なりの言葉で兄を励ましたり、茶化したりする。
そのやりとりは、どこかぎこちないのに温度があって、
“不器用な二人の、精一杯な交流”に見えました。

79話のラストでフミヤがウォークマンを借り、
鼻歌まじりに帰っていく姿は、
彼自身も、この新沼兄との時間を嬉しく感じていたように思えます。

帰路に着いたフミヤは目を疑う。
末吉がなんと、フミヤが大切にしている、
ペットボトルのコーラの中身を捨てていました。

外の世界が少しだけ明るくなった直後に、
また何かが「壊される」音が聞こえてくる。
この落差が、9巻全体の空気を象徴しているようでした。

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第80話「喧嘩」〜81話「開放」

80話は、末吉とフミヤの関係が一気に爆発する回です。

フミヤは感情のブレーキが利かなくなり、
身体ごとぶつかるように末吉に怒りをぶつけます。

末吉の中にも、「自分がずっと搾取されてきた」という怒りや
“どうせ俺が悪いんだろ”という自己否定がこびりついていて、
長年たまり続けてきたものが、とうとうあふれ出してしまう。

二人の言葉はぜんぜん噛み合わないまま、ただ傷を広げていきます。

読んでいてしんどいのは、
どちらも完全な「悪役」ではないところです。
末吉は末吉で、家族を守るために背負いすぎてきた人。
フミヤはフミヤで、壊れた環境の中でゆがんでしまった人。

どちらも「正義」を持ったまま殴り合ってしまうからこそ、
余計に救いが見えません。

一方81話では、視点が野上に移ります。

仕事帰りに、
かつての職場の先輩から「明日、夏海を迎えに行く」と告げられる。
研修所に連れて行くことは、世間的には「正しい」選択なのかもしれない。
でも野上は、その“正しさ”に心が追いついていない。

夏海は本当に納得しているのか。
本当にそれ以外に道はないのか。
頭では理解しようとしながら、心だけがずっと抵抗している。

「お前は今、自分のやってることを理解できてるか?」
そう問われたときの野上の表情を想像すると、
読んでいる方まで一緒にぐらっと揺れる感じがしました。

この回は、
・家族の中で爆発する怒り(末吉とフミヤ)
・外の“制度”に押し出されていく現実(野上と夏海)
が並行して描かれていて、
「どこにも正解がない世界」の重さが際立つパートだと感じました。

第82話「薄日」〜83話「兄弟」

82話では、末吉の姉・長月(みづき)が
「あひる書店」の店長・柳(やなぎ)に、弟の様子を相談しに行きます。

最近の末吉は、
立ち読みのお客さんに強く当たったり、
トイレの客を追い出そうとしたり、
どこか“いつもの末吉ではない”行動が増えている。

柳はその変化に気づきつつも、
どう関わればいいのか迷っていました。
さらに末吉が森田すみかの居場所を何度も聞いてきたことも打ち明けます。

長月にとっては、
フミヤの暴走、母の老い、父への複雑な感情が重なり、
もはや誰に頼ればいいのか分からない状態。
その中で、柳だけが
“家族の外”から静かに話を聞いてくれる存在になっています。

83話は、柊凪の内面が深く描かれる回です。

学生時代の柊凪(ひなぎ)は、友達から兄妹の恋愛を
「ありえないよね」「気持ち悪いよね」と言われるたび、
彼女の胸の中にある“誰にも言っていない感情”だけが、
静かに傷ついていく。

柊凪にとって兄は、
本を読む姿が似合う静かな人で、
草花の名前を教えてくれる優しい人。
父の暴力から守ってくれた人。
世界の中で、いちばん安心できる場所。

だから、その人に恋をしてしまった。
でも、それを世界は「気持ち悪い」と切り捨てるかもしれない。

自分でもちゃんと整理できない感情を抱えたまま、
「兄は私をどう見ているんだろう」
「この気持ちは全部、間違いなんだろうか」
と、湯船の中でひとり涙ぐむラストは、
読者の心にもじわっと残るシーンでした。

9巻全体を通して見たとき、
この83話は
「柊凪というキャラクターの核」を
そっと見せてくれる回だと思います。

第84話「世界」〜87話「母子」

84話では、末吉とフミヤの対立が、いよいよ取り返しのつかないところまで来てしまいます。

末吉が作ったカレー。
家族の食卓という、一見「普通」に見える場所で、
彼はフミヤに対して極端な“線引き”をしてしまう。

皿に盛られたあまりにも少ない量。
残りのカレーをシンクに流す仕草。
言葉ではなく行動で、「お前はここにいらない」と突きつける。

フミヤは、その露骨な拒絶にブチ切れ、
テーブルの食器が割れ、
母は何事もなかったかのように食事を続ける。

ここは、本当にきついシーンです。

家族がぞれぞれ別の方向を向いていて、
誰も本当の意味で向き合えていない。
でも、それぞれに「生きるので精一杯」だからこそ、
責めることもできない。

85〜86話では、
泡踊りのテレビ中継に映った父の姿が、
西田家の時間を一気に揺り動かします。

長月は、柳を通じて父の近況を知っていました。
父は柳の前で泣き崩れ、
「家に戻りたい」とこぼしていた。

けれどそれを正直に伝えたところで、
今の末吉には受け止めきれない。
だから「たまたまテレビで見た」という形にする。

長月にとっては、
父を許すことも、完全に突き放すこともできない。
ただ、“弟が壊れないように”嘘と本当の境目を作ることしかできない。
その立ち位置の苦しさが、静かににじんでいました。

87話「母子」は、9巻の中でも、とくに胸が締めつけられる回です。

テーブルでうつ伏せになっている末吉を見て、
母は昔のことを思い出します。

小さい頃、
料理を手伝ってくれたこと。
雛人形を一緒に飾ってくれたこと。
本当は娘と分かち合いたかった時間を、
息子がそっと受け取ってくれていたこと。

「あんたは、私に付き合ってくれたんやなあ」
「もう、私のことは捨ててええよ」
「お父さんとなんとかするから、今までありがとう」

母の言葉には、
末吉をこれ以上縛りつけたくないという“解放の願い”と、
本当はずっと甘えていたかったという“弱さ”が混ざっています。

でも末吉には、それが
「父が戻ってくるから、お前はもう用済み」
という宣告のように聞こえてしまう。

「俺は、あんたが好きやから、そばにおったんや」
そう叫んで家を飛び出したあと、
モノローグとしてそっと置かれる一文。

おかんと交わした最後の会話だった。

この一行だけで、
9巻の重さと切なさが、全部喉の奥に詰まってくる感じがしました。

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出典:テレビ東京・BSテレビ東京

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感想まとめ

住みにごり第9巻(78〜87話)は、
一言でまとめると

誰も悪くないのに、誰も報われない
それでも、みんな誰かを好きでいたかった

そんな巻だと感じました。

柊凪は、兄を好きでいる自分を責め続け、
夏海は、外の世界へ歩き出したい気持ちと、怖さのあいだで揺れ、
野上は、「正しさ」と「本心」のあいだで立ち尽くし、
末吉は、家族を守ろうとし続けて限界を超え、
母は、息子を解放したくて、自分を手放そうとする。

家族という枠組みの中で、
それぞれが「自分だけの地獄」と「自分だけのやさしさ」を抱えている。
それが、静かに噛み合わないまま時間だけが進んでしまう。

だから読後感はしんどいのに、
どこかで「誰かひとりを責める気持ち」が湧いてこない。
ここに、住みにごりという作品のすごさがある気がします。

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