
誰かに支配され続ける苦しさって、どんな感情なんだろう──。
『住みにごり』第68話では、ついに清くん事件の真相に近づく“決定的な記憶”が描かれます。
舞台は再び、フミヤの支配空間へ。
静かな空気の中に、じわじわと狂気がにじみ出してくる──そんな緊張感に満ちた回です。
この記事では、特に印象的な場面を振り返りながら、
「なぜ末吉は耐えているのか」「支援と支配の境界線はどこにあるのか」
そんな問いに、まさてっくなりの視点で考察していきます!
※今回の第8巻では、より深く考察や感想を伝えたいと思い、各話ごとにネタバレ記事を分けて投稿するスタイルにしています。
最後には「8巻まとめ記事」も公開予定ですので、通し読みしたい方はそちらもぜひ。
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『住みにごり』第68話「小指」ネタバレ考察
末吉の涙の告白
舞台はフミヤの部屋──まるで空気そのものが彼のものみたいに、張り詰めた空間。
末吉は畳に平伏したまま、涙をこらえながら口を開きます。
「清くんは…一生寝たきりや」と。
その言葉の重さ。
かつての仲間に起きた“取り返しのつかないこと”を、フミヤの前であえて語る勇気。
でもそれは、勇気というより“限界”に近いものだったのかもしれません。
末吉は叫びます。
「全部バラす。清くんにしたことも…!」
あの瞬間、彼は過去の呪縛ごと叫んでいたように見えました。
でも、フミヤは何も動じない。むしろ逆に怒りをあらわにします。
人は「正しさ」だけでは、相手を動かせない。
それがこの作品の中で、何度も繰り返し示されてきた現実です。
幼少期の衝撃的な記憶
小学生のフミヤが、清くんに向かってブロックを振り下ろそうとする──。
あまりにも決定的すぎるシーンでした。
それが清くんを寝たきりにした「直接的な原因」とは断言されていないけれど、
この記憶の重さが、末吉にもフミヤにも刻まれているのは間違いない。
フミヤの“支配の根”がここにあるなら、彼は今も過去に囚われているのかもしれません。
末吉の”小指”と壊れた感情
小指が壊されたことを、職場では「頭をぶつけた」と誤魔化す末吉。
「何もなかったふり」をすること。
それが一番、自分を壊す行為だとわかっているのに──。
ひとり車の前で、末吉は拳を叩きつけます。
感情の捌け口がそこしかないということ。
何もできなかった無力感が、鉄をもへこませる勢いでぶつけられたあの場面。
それでも彼は「笑って」帰っていくんですよね。
もう、泣けてきます。
「研修」という名の“支配”の実態
後半では、別軸の“就労支援センター”の描写がじわじわ怖さを増していきます。
若者が「帰りたい」と訴えると、担当者は「帰れる家はもうありません」と冷たく告げます。
服も選べない。
外出も自由じゃない。
希望もない。
それでも「これは支援です」と言われたら、誰が声を上げられるでしょうか。
野上の“正義”と、届かなかった想い
少女を研修から連れ出した野上。少女の実家に訪れる。
彼は土下座し、母親に何度も謝罪する。
でも母親は無関心どころか、「娘が帰ってきても困る」ような態度を取るんです。
娘はそれに激昂し、母親を突き飛ばしてしまう。
正しさが報われない。
思いが通じない。
「まっすぐな想い」は時として、誰かを余計に苦しめてしまう。
最後に|善意は暴力にもなりうる
この回を読んで、何より強く思ったのは──
「善意」もまた、形を間違えれば“暴力”になるということ。
末吉の「清くんを救いたい」という善意も、
野上の「少女を助けたい」という真っ直ぐさも、
それが“相手の心に届かなかった”瞬間に、暴力と紙一重になる。
だからこそこの作品は、読者に問いかけてきます。
「あなたは本当に、相手の気持ちを想像できていますか?」
ただ優しくするだけじゃ足りない。
ただ正しいことを言うだけでも足りない。
本当にその人のためになる“やさしさ”とは何なのか──。
それを問い続けるのが『住みにごり』なんだと思います。
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