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『オデュッセイア』黒人起用はなぜ?炎上理由とノーランの意図を考察

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『オデュッセイア』黒人起用はなぜ?炎上した理由とノーランの意図を考察するアイキャッチ画像

映画『オデュッセイア』で、大きな議論を呼んでいるのがルピタ・ニョンゴのキャスティングです。

ニョンゴが演じるのは、ギリシャ神話で「絶世の美女」として知られるヘレネ。

公開前から海外では、

「なぜヘレネを黒人俳優が演じるの?」

「原作の設定を変えているのでは?」

といった声が上がり、イーロン・マスクまで反応する騒動になりました。

さらに公開前には、エリオット・ペイジの配役や現代的な英語表現も議論になっています。

では、なぜクリストファー・ノーラン監督はこうしたキャスティングや表現を選んだのでしょうか。

そして、本当に原作や古代ギリシャの世界を無視した映画なのでしょうか。

この記事では、『オデュッセイア』の黒人起用が炎上した理由を中心に、原典のヘレネ像やノーラン監督本人の発言から、その背景を詳しく解説します。

『オデュッセイア』黒人起用はなぜ炎上した?

ルピタ・ニョンゴのヘレネ役が議論に

議論の中心になったのは、ルピタ・ニョンゴのキャスティングです。

日本公式サイトによると、ニョンゴはスパルタ王妃ヘレネと、その姉妹クリュタイムネストラの二役を演じています。

特に注目されたのがヘレネです。

ヘレネはトロイア戦争のきっかけとなった女性で、後世では「絶世の美女」の象徴として知られてきました。

そのため、黒人俳優であるニョンゴの起用に対し、「従来のヘレネ像と違う」という反発が起きました。

イーロン・マスクもキャスティングを批判

論争をさらに大きくしたのが、イーロン・マスクの発言です。

マスクはX上でニョンゴの起用を批判し、ノーラン監督について「誠実さを失った」とする趣旨の投稿もしています。

なぜルピタ・ニョンゴをヘレネ役に起用した?

ノーランが重視したのは「強さ」と「落ち着き」

ノーラン監督はインタビューで、ニョンゴの「強さ」と「落ち着き」を評価したと語っています。

感情を表面に出しすぎなくても、その奥に複雑な内面を感じさせられる点も理由の一つでした。

そして、ニョンゴにどうしても演じてもらいたかったと明かしています。

つまり、ノーラン本人が説明している起用理由は、肌の色ではありません。

今回のヘレネを表現する俳優として、ニョンゴを選んだということです。

ニョンゴも「これは神話の物語」と説明

ニョンゴ自身も、キャスティングをめぐる批判について語っています。

その中で強調したのが、『オデュッセイア』は神話の物語だという点です。

また、今回のキャストは現代の世界を反映したものだという考えも示しました。

さらにヘレネについて、単なる「美しい女性」ではなく、その美しさゆえに背負った苦悩まで表現しようとしています。

ノーランが求めたのは、従来のヘレネ像をそのまま再現することではなかったと考えられます。

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原作のヘレネは白人だった?

「白い腕のヘレネ」という表現はある

ホメロスには、ヘレネを「白い腕の」と表現する言葉があります。

ただし、これはヘレネだけに使われた表現ではありません。

ヘラやナウシカアなど、複数の女性にも使われる定型的な表現です。

そのため、

「原作では現代的な意味で白人女性だと明記されている」

とまでは言えません。

一方で、原典で黒人として描かれているわけでもありません。

約2800年前の神話に、現代の人種区分をそのまま当てはめるのは難しい部分があります。

黒人起用以外にも炎上した理由

エリオット・ペイジのシノン役にも批判が出た

ルピタ・ニョンゴだけでなく、エリオット・ペイジのキャスティングも公開前から議論になりました。

ペイジは2020年にトランスジェンダーであることを公表した俳優です。

ノーラン作品では、『インセプション』のアリアドネ役でも知られています。

『オデュッセイア』では、トロイア戦争に参加したギリシャ兵シノンを演じています。

ところが公開前には、「エリオット・ペイジがアキレウスを演じる」という情報がSNSなどで広がりました。

これをきっかけに、トランスジェンダー俳優をギリシャ神話を代表する戦士に起用することへの批判が起こります。

しかし、この前提自体が誤りでした。

ペイジが演じているのはアキレウスではなく、シノンです。

公開後もペイジの体格や声などを理由に配役を批判する声は残り、キャスティングをめぐる議論は続きました。

一方で、実際に映画を観た人からはシノン役の演技を評価する声も出ています。

つまりペイジをめぐる炎上には、実際のキャスティングへの賛否だけでなく、「アキレウス役」という誤情報から広がった批判も混ざっていたことになります。

「Dad」など現代的な英語も話題になった

『オデュッセイア』では、言葉遣いも議論になりました。

テレマコスが父親を「Dad」と呼ぶなど、古代ギリシャを舞台にした映画としてはかなり現代的な英語が使われています。

しかし、これはノーラン監督が意図的に選んだ表現です。

ノーランは、古代を描いた映画だからといって、登場人物が必ず格調高い言葉や特定のアクセントで話す必要はないと考えました。

現代の観客が人物を身近に感じられることを優先しています。

「古代映画ならこうあるべき」を疑っている

ノーランは、古代を描いた映画に対して観客が持っている固定観念そのものを問い直しています。

「古代人ならこう話す」

「神話映画ならこう見える」

そうした映画側の慣習を、そのまま使わなかったのです。

黒人俳優やトランスジェンダー俳優の起用について、ノーランがこの考えと直接結びつけた発言は確認できません。

そのため、「固定観念を壊すためにこのキャスティングにした」と断定することはできません。

ただ、今回の炎上は史実との違いだけが原因とは限りません。

映画や絵画などを通して長年作られてきた「古代ギリシャの英雄や美女はこう見える」というイメージがあります。

そこから外れたこと自体が、反発を大きくした可能性もあります。

これは批判した人々の動機として確認された事実ではなく、反応から考えられる一つの見方です。

本作全体が従来の「古代ギリシャ映画らしさ」に縛られていないことも、この論争を見るうえで重要なポイントです。

「A time of apparent magic」が示すノーランの意図

冒頭から映画の見方を示している

映画は、

「A time of apparent magic」

という言葉から始まります。

意味は「見かけ上の魔法の時代」に近いものです。

重要なのは「apparent」という単語です。

単純に「魔法の時代」とはしていません。

『スター・ウォーズ』の冒頭から着想

ノーランは、この導入について『スター・ウォーズ』から着想を得たと説明しています。

『スター・ウォーズ』は冒頭の一文によって、これから見る世界を観客に受け入れさせます。

『オデュッセイア』でも同じように、最初に映画の見方を示したかったのです。

青銅器時代の人々にとって、説明できない現象は神や魔法の働きに見えたかもしれません。

本作が神話をリアルな質感で描いている理由も、ここにつながります。

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黒人起用もノーランの意図だった?

ここは事実と考察を分ける必要があります。

SNSでは、

「黒人起用も現代英語も、冒頭の言葉ですべて説明されている」

という見方もあります。

しかし、ノーランが「A time of apparent magic」とニョンゴの起用を直接結びつけた発言は確認できません。

そのため、

「冒頭の一文が黒人起用の答えだった」

と断定することはできません。

一方で、現代英語や配役を含め、本作が古代映画の固定観念から離れているのも事実です。

ニョンゴやペイジのキャスティングも、その作品全体の方向性と矛盾するものではありません。

よくある質問(FAQ)

Q1. 『オデュッセイア』のヘレネは原作では白人?

A. 現代的な意味で「白人」と明記されているわけではありません。

「白い腕の」という表現はありますが、これは複数の女性に使われる定型表現でもあります。

一方で、原典で黒人として描かれているわけでもありません。

Q2. ノーランはなぜルピタ・ニョンゴを起用した?

A. ノーラン本人は、ニョンゴの「強さ」「落ち着き」「複雑な内面を感じさせる演技」を評価したと説明しています。

黒人俳優だから起用したとは語っていません。

Q3. エリオット・ペイジはアキレウス役なの?

A. 違います。

エリオット・ペイジが演じているのは、ギリシャ兵のシノンです。

公開前には「アキレウス役」という情報が広まり、それを前提とした批判も起きました。

しかし、実際のキャスティングとは異なる情報でした。

Q4. 『オデュッセイア』の現代的な英語はわざとなの?

A. 意図的です。

ノーランは、古代映画だからといって登場人物を不自然に古めかしく話させず、現代の観客が人物を身近に感じられる表現を選んでいます。

Q5. 「A time of apparent magic」とはどういう意味?

A. 「見かけ上の魔法の時代」という意味に近い言葉です。

ノーランは、青銅器時代の人々には説明できない現象が、神や魔法の働きに見えた可能性を意識しています。

また、この冒頭の一文は『スター・ウォーズ』から着想を得たことも本人が明かしています。

まとめ

『オデュッセイア』をめぐる議論を追っていくと、もう一つの面白い問いが浮かびます。

それは、「古代ギリシャらしい見た目」とは、そもそも誰が作ったイメージなのかということです。

私たちが思い浮かべる神話の英雄や美女の姿には、原典だけでなく、絵画や彫刻、過去の映画などから受け取ったイメージも重なっています。

だからこそ、その姿から外れた配役は強い違和感を生むことがあります。

ノーラン版『オデュッセイア』の配役論争は、神話をどこまで忠実に再現するかだけの問題ではありません。

古典を現代に映像化するとき、何を残し、何を新しく解釈するのか。

今回の炎上そのものが、2800年前の物語を現代に作り直す難しさを映し出しているのかもしれません。

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